73. いまさら聞けない「電気・電磁気の有名な法則」
先日は「オームの法則」について解説しましたが、他にも電気・電磁気の有名な法則があります。ここでは、ジュールの法則、クーロンの法則、ファラデーの電磁誘導の法則を紹介しますが、まずオームの法則の復習から始めます。
オームの法則(Ohm's law)
オームの法則とは、一様な導線を流れる電流の強さと導線の両端の電位差とは比例するというもので、比例定数は電気抵抗になります。
つまり2点間の電圧V(単位:ボルト、V)、電流I(単位:アンペア、A)抵抗R(単位:オーム、Ω)の間では、式1の関係が成り立ちます。
V = IR (1)
ゲオルク・ジーモン・オーム(Georg Simon Ohm)が1827年に発見した法則です。
式を変形すると、I = V/Rとなり、「電流は電圧に比例し電気抵抗に反比例する」と言い換えることも出来ます。
ジュールの法則(Joule's law)
ジュールの法則は、1840年に英国の物理学者ジェームズ・プレスコット・ジュール(James Prescott Joule)によって電流の熱作用について実験的に見出された法則です。導線に定常電流を流した時、一定温度で保たれた導線から流出する熱量(これをジュール熱と言う)は、導線の抵抗と時間に比例し、電流の強さの二乗に比例します。
時間t(単位:秒)の間に流出する熱量Q(単位:ジュール、J)は、電流の強さをI(A)、導線の抵抗をR(Ω)、導線に加えられた電圧をV(V)とすると、式2の関係で表すことが出来ます。
Q = I2Rt = IVt (2)
ジュールの第一法則ともいいます。
またハインリッヒ・レンツ(Heinrich Lenz)が後にジュールと独立にこの法則を発見したので、ジュール・レンツの法則(Joule-Lentz law)とよぶ場合もあります。
因みにジュールの第二法則とは、「理想気体の内部エネルギーはその圧力や体積には依存せず、温度にのみ依存する」という熱力学の法則です。
クーロンの法則(Coulomb's law)
クーロンの法則とは、2つの点電荷 q1、q2(単位:クーロン、C)の距離をr(単位:メートル、m)とすると、真空中において両者の間に働く静電気力F(単位:ニュートン、N)が式3で与えられるというものです。ここでε0は真空中の誘電率であり、ε0 ≒ 8.854 × 10−12(F/m)(Fは、コンデンサーの容量の単位ファラド)です。
F = q1⋅q2/4πε0r2 (3)
一般には、1/4πε0を纏めてkで表し、k = 1/4πε0 ≒ 9 × 109(N⋅m2/C2)で計算します。電荷を帯びた粒子(荷電粒子)間に働く力の大きさは、2つの粒子の電荷(q1{\displaystyle \ q_{1}}とq2{\displaystyle \ q_{2}})の積に比例し、粒子間の距離r の二乗に反比例することになります。同符号の電荷の間には斥力、異なる符号の電荷の間には引力がはたらきますが、これを「クーロン力」といいます。
この法則は、1785年にシャルル・ド・クーロン(Charles-Augustin de Coulomb)によって確立されました。
ファラデーの電磁誘導の法則(Faraday's law of electromagnetic induction)
電磁誘導(electromagnetic induction)とは、磁束が変動する環境下に存在する導体に電位差(電圧)が生じる現象です。言い換えれば、コイルの中の磁界が変化するとコイルに電流が流れるということで、この電流を誘導電流(induced current)といいます。
一巻きのコイルを貫く磁束をΦ(単位:ウェーバー、Wb)とすると、Δt秒後の磁束が Φ + ΔΦ に増加した時の誘導起電力Vは、式4で表す事が出来ます。ここでRはコイルの抵抗、Iはコイル内に発生する誘導電流の強さを表します。
V = RI = -dΦ/dt (4)
これがファラデーの電磁誘導の法則で、「電磁誘導において、1つの回路に生じる誘導起電力の大きさはその回路を貫く磁界の変化の割合に比例する」ことを示しています。
スマホのワイヤレス充電にこの原理が使用されているタイプがあります。
【参考文献】
1) 長倉三郎, 井口洋夫, 江沢洋, 岩村秀, 佐藤文隆, 久保亮五編, 岩波 理化学辞典 第5版, 岩波書店 (1998).