66.生誕120年 棟方志功展 メイキング・オブ・ムナカタ
棟方志功の表記展覧会が東京国立近代美術館で開催されています。 (2023.10.6-12.3)
私が小学生だった頃、当時のインタビューや版画を彫る姿を観て「とても変わった芸術家のおじいさん」という強烈な印象をもったことを覚えています。すごい芸術家はあういう人だという固定概念が植えつけられた、それくらいインパクトがありました。しかし小学生の私には迫力のみを感じていて、作品についてはよくわかりませんでした。
今回、初めて棟方志功の若い頃から晩年までの作品を一堂に見ることができました。
木版画のことを板画(ばんが)と称しているのだそうです。
そんなことも知らない奴が何を言っているのだと思われるかもしれませんが、岡本太郎と同じような圧倒的なエネルギーと意志のようなものが作品から飛(ほと)ばしっていました。他の人の詩や文章から得たインスピレーションを題材とし、さらにその詩や文をちりばめた作品、あの独特としか言いようのない不思議なバランスと味のある文字は見るものを圧倒します。
勝手な想像ですが、完成図が最初に頭の中で完成されているのでしょうか。ビジネス的にいえば、グランドデザインがハッキリしていて、バックキャスティングしながら彫っているということなのかと。
柳宗悦や浜田庄司などの民藝運動の巨人に才能を見出されたようですが、その柳宗悦が表装(を指導?)した作品は、志功の板画を引き立たせるだけでなく、表装も芸術であり、画と表装が一体であることを感じさせてくれます。
代表作といわれる「大和し美し」や「二菩薩釈迦十大弟子」はもちろん素晴らしいのですが、谷崎潤一郎の「鍵」の挿絵(特に「大首の柵」)には不思議なエロティシズムがあり、見入ってしまいました。
余談ですが、最近、作品を自由に撮影してもよい展覧会が増えましたが、会場内でのシャッター音は、少々興醒めですね。実物を眼に焼き付けるに勝るものなしと私は思います。
芸術の秋、到来