64.ジペプチド分析② ジペプチドの有用性

 今回はジペプチドの有用性について紹介したいと思います。 

 

 アミノ酸の有用性は維持しつつその物理的性質を改善するため、アミノ酸をジペプチドとして用いる研究が進められています。 

 グルタミンには腸管保護作用があるため、輸液や医療食の用途で有用なアミノ酸ですが、水に対する溶解度が低いこと、溶液中での安定性に欠けることで使いにくいアミノ酸でもありました。これらの欠点は、グルタミンのアミノ基にアラニンを結合させれば改善させることが出来ます。アラニンは保護基のようなものですね。ジペプチドであるアラニルグルタミンは、既に実際に用いられています。 

alanylglutamine

 食品の呈味形成には、その素材となる動物や植物などに含まれる糖質、タンパク質、脂質、ミネラル、有機酸、核酸関連物質、そしてアミノ酸やペプチドなどが関与しています。なかでもグルタミン酸などのアミノ酸、糖、イノシン酸などの核酸、乳酸などの有機酸はこのような成分として有名です。 

 しかし、実際のところ、食品の味は単純にこれらの成分の合算というわけではなく、多様かつ複雑で、それが食材や調理の妙となっています。 

 

 少し話が逸れますが、食品の加工や貯蔵している間にアミノ酸と還元糖とがメイラード反応(褐変反応)により、アマドリ化合物が生成することがあります。これは味噌が「熟成」していく過程で増加し、色合いに影響を与えるだけでなく、呈味や香気などに関与しています。興味のある方は、下に参考文献を示しましたので、読んでみてください。

Correlation between miso coloration and the amount of amadori compounds

 

 また、チーズ、ワインも製造工程で、新たな成分が出来たりその組成が時間と共に変化したりしています。ジペプチド、トリペプチド(アミノ酸が3つ結合したペプチド)もその成分の一つで、アミノ酸の代謝やタンパク質の分解により生成し、その種類、量、比率は温度などの環境や時間で変化し、それが独特の味を生み出す一因と考えられています。 

 

 さて、ジペプチドのような低分子ペプチドですが、その存在や動態、機能はこれまであまり調べられてきませんでした。次回、その理由について考察しておきたいと思います。 

 

 

【参考文献】
(1) Yoshida H., et alJ. Agric. Food Chem. 57, 1119–1126 (2009):https://doi.org/10.1021/jf803235m 

 

 

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