77. いまさら聞けない「ルシャトリエの法則」
今回は、「ルシャトリエの法則」について、解説します。
「ルシャトリエの法則(Le Chatelier’s law)」は,化学平衡にある系で,圧力や温度などの平衡を定める状態の変数の一つに変動が加わったときに、系がどのように応答するかについての法則で、「化学平衡にある系で圧力や温度などの因子の一つが変動すると,その問題の因子を逆方向に変動させるような変化が起きる」というものです。
つまり、化学平衡にある系は外部からの変動を受ける時,系内部で緩和が起こります。
簡単に言えば、「平衡状態にある反応系に何らかの変化(温度、圧力、濃度など)を加えた時、その変化を打ち消す方向に平衡が移動する」、さらに簡単に言うと、「何かをしたら、その影響を相殺する方向に反応が進む」という法則です。
平衡状態とは、可逆反応において、正反応と逆反応の速度が等しくなり、物質の量に変化がなくなった状態です.。
そこに温度、圧力、濃度などの状態変数に変化を加えると、平衡状態は一時的に崩れますが、変化を打ち消す方向に平衡が移動するので、例えば、以下のような現象が見られます。
〇 温度を上げた場合は、熱を吸収する方向に平衡が移動
〇 圧力を上げた場合は、圧力が下がる方向に平衡が移動(気体分子の数が減る方向に移動)
〇 ある物質の濃度を上げた場合は、その物質を消費する方向に平衡が移動
ルシャトリエの法則を視覚的に理解する事例として、二酸化窒素(NO2)と二量体である四酸化二窒素(N2O4)の混合気体がよく用いられています。
NO2とN2O4との間には式1の平衡が成り立っています。
2NO2 ⇆ N2O4 (1)
NO2は赤褐色ですが、N2O4は無色です。
1) 圧力が変化した場合:
平衡状態にあるNO2とN2O4の混合気体をシリンジに入れて、シリンジのピストンを押し圧力を高めると、温度が一定であれば気体の赤褐色が薄くなります。これは、圧力上昇の要因を打ち消すために気体分子の総数が減少、即ちNO2が減少してN2O4が増加する方向に平衡が移動したことによる変化です。
2) 温度が変化した場合:
上記の反応は、式2で表されるような発熱反応です。
2NO2 = N2O4 + 57.3 kJ (2)
NO2の入ったシリンジを熱水に浸すと気体が濃い赤褐色となり、逆に氷水に浸すと色が薄くなります。加熱すると吸熱方向に反応が進むためNO2の割合が多くなり、冷却すると発熱方向に平衡移動してN2O4の割合が多くなるためにこのような変化が起こります。