177.世界を憂う
年末にあたり、この一年を通じて政治や社会について思うこと、特に年配層が共通に感じているだろうことを取り上げてみます。
憲政史上初めて女性の内閣総理大臣が誕生しました。
日本で名実共政治の頂点にたった女性は、卑弥呼か持統天皇以来かもしれません。しかし彼女のことは女性だとか硝子の天井を破った人というよりも、右派とか保守強硬派というラベルで語られています。きりっとした言動がそのイメージに拍車をかけてもいます。(もっとも外交デビューの折は「女性」を全面に出していましたが・・・)
さて、与党の大物政治家の発言と一国の首相の発言とでは、その重みには天と地との差があります。いわゆる台湾有事に関わる国会答弁は、首相であることを自覚して意識的に踏み込んだのでしょうか?その後の対応を見ているとその意思はなかったようです。ドン引きするような「かの国」の対応にも違和感を覚えますが、とにもかくにも慎重な言動が責任ある政治家の一丁目一番地です。
石破さんは直言の人でしたが、首相になって慎重になりました。立場や置かれた状況を考えれば仕方ありませんでしたが、奥歯にものが挟まったような言動がこれまでとのギャップを際立たせ、多くの人が期待外れと感じ、結果的に昨年は衆議院で今年は参議院で与党は少数となり、ついには連立の枠組みも崩れました。
政権与党が強すぎるとストッパーが不在となり、上の意向として多少筋道が通らないことが押し進められて、のちのち問題となります。政権基盤が弱いと目の前の人気取り施策に終始して、未来社会に禍根を残します。 来年はリーダーとしての手腕と舵取りの真価が問われます。
日本は戦後80年間、直接的な戦争に巻き込まれず、特に戦後十数年経て生まれた私などは、その安全・安心の環境を最も享受してきた世代です。以下、戯言かもしれませんが、その世代としての率直な意見です。
まず、軍事強国が軍事力を行使して他国に侵攻することはあってはならないし、さらに侵攻後のある時点での優劣を元に国境を新たに定めてはなりません。
また、軍事、経済、科学技術の圧倒的な最強国が、それらを背景に他国を脅かし独り勝ちになるような世界であってはなりません。
現在目の当たりにしているのは、都合の悪いルールはとりあえず破棄して、無理難題を押しつけ、自国内や他国の反応を観察して次のアクションをとるという横暴なやり口です。強大な軍事力や経済力を背景にそれを交渉材料として有利に物事を進めること(彼のいうところのディール)は、今も昔も外交の常套手段でしょう。力だけの支配にならないようにさまざまなルールが出来、さまざまな知恵でそれが守られ、現代世界が(局所的な問題は山積していますが)成り立っているのだと思います。
力を背景に、断定的扇動的短いフレーズで発言を繰り返すリーダー、ナショナリズム、保護主義の終着点は歴史を振り返るまでもありませんが、どうもそちらに向かっているように感じられて仕方がありません。

