4.何か凄いことをしようよ
「何か凄いことをしようよ。世界の誰もしてないことをしよう!」
工場の品質管理部から研究所に戻ってきた私に上司が与えた「テーマ」でした。
今朝現場で発生したトラブルを午後には解決して正常に戻さなければならない、そのために揃えなければならないデータは何か?を考えながら、時間に追われる毎日を6年間過ごしてきました。最初のテーマは上司が与えてくれるものだと思っていましたし、「なんてことことを言うんだ」「これは、「丸投げ」ではないか」と思いました。
しかし、これには大切な示唆があり、私の成長機会となりました。「世界の誰もしていないこと」を知るためには、世界の研究に目を向けていなければなりませんし、「何か凄いこと」は、世界のトップレベルの研究を理解し、それを評価できる知識がなければその入り口にも立てません。もちろん「誰もやっていないこと」であっても、それは企業の成長につながるものでなければなりません。
約3か月間、悩み、調査し、1999年~2000年当時、ほとんどの人が必要性を理解していなかった今でいうメタボローム解析を始めました。その頃は、ミレニアムプロジェクトがあり、ゲノム、プロテオーム研究の全盛期でした。経過はいずれまたお話するとして、その研究はアミノ酸ターゲットメタボロミクスに発展し、アミノ酸分析の超高速化と血漿アミノ酸濃度を用いたリスクスクリーニングビジネス(アミノインデックス)につながりました。
分析化学は企業にとって基盤技術です。世界の中でもユニーク且つ強力な分析力を持つことにより、企業は成長することが出来るし、新しいビジネスチャンスの機会も生まれます。世界の最先端技術を常にウオッチし、それを理解しておかなければなりません。「井の中の蛙」では、成長は生まれません。
また、先端的な研究をすることで、アカデミアからも一目(?!)おかれ、接点で出来ます。これは、企業にとっても企業の研究者にとっても大切なことだと思います。