5.海外の学会に行く意義 

企業研究者でも、海外の学会に参加する機会があります。私が少しの予算なら自由に使える立場になってからは、若手には年に1回は、どのような学会でもいいから海外に行くように命じていました。学会も出張場所も出張理由も本人に考えさせました。ただし、エコノミークラスで、とお願いはしていましたが。 

このように、いい加減な上司でしたが、世界の研究や研究者を肌で感じてもらいたい、日本と異なるあの刺激的な雰囲気、研究姿勢に24時間触れてもらいたいと考えていました。2年程度の研究派遣も計画的に進めました。 

学会出張ですが発表出来たほうがよいのはもちろんです。ポスターでもかまいません。発表しない場合に比べて、いろいろな意味で有益です。個人の成長にもつながります。得られる情報も格段に増えます。座長や質問をしてくれた人、発表後に話しを聞きに来た人とは、強いパイプが出来ます。 

しかし、必ずしも発表はしなくてもよいと思います。企業研究者だと、なかなか公表できるものを用意することはできません。 

海外の学会に行く大きなメリットの一つは、日本の有名な先生と近づきになれることだと考えています。国内では近づきがたいビッグネームの先生でも海外だと声をかけやすい。そのような先生のそばに行けるのは海外の学会だからこそできることです。先生も私たちの名前を憶えてくれます。 

このつながりは、その後の研究生活で大いに役立ちます。恥ずかしがりの私でしたが、日本の分離分析分野のトップの先生方とお近づきになれたのは海外の学会でした。特に、メタボローム研究創成期に海外の学会で知り合った先生との関係性は今でも自分の財産です。 

Follow me!