(03)LC/MS/MSを用いたメタボローム解析の手順:②測定から解析まで
続いて、測定から解析までお話します。
分離
生体内の代謝物の分離には、もちろん逆相系HPLCを用いることができますが、代謝物には高極性の化合物も多いので、ODS以外のさまざまな固定相が用いられているようです。なかでもペンタフルオロフェニルプロピル(PFPP)基を有するカラムは、内在性代謝物の分離に適していて、受託分析機関でも用いられています。
https://www.shimadzu-techno.co.jp/annai/pha/h04.html
また、親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC)も高極性の化合物の分離には有用です。有機溶媒比率の大きな移動相で代謝物を溶出することが出来るので、特に質量分析との相性がよいという特徴があります。
質量分析計
ターゲット解析では、トリプル四重極質量分析計がよく用いられます。選択反応モニタリング法(SRM)を用いれば、生体試料などのマトリックス中の妨害成分の影響を受けにくく、多成分同時定量が可能です。最近では、四重極飛行時間質量分析計(QTOF-MS)や四重極キングドントラップ質量分析計を用い、精密質量によるフィルターで妨害成分の影響を排除する測定もさかんに行われています。
ノンターゲット解析では、QTOF-MSや四重極キングドントラップ質量分析計のようなハイブリッド質量分析計がよく用いられています。ノンターゲッ ト解析は解析対象が特定されていないので、複数の試料を比較し特徴のある化合物を同定する必要があるので、指定した測定範囲の全てをスキャンするプリカーサーイオンスペクトルや、スキャンデータで強度の大きいものから順番にプロダクトイオンスペクトルを取得するデータ依存性解析(data dependent acquisition, DDA)によりデータを収集していきます。
データ解析
メタボローム解析用のソフトを用いて解析すればよいのですが、ノンターゲット解析では、一般的には、一定の強度以上のスペクトルについて抽出イオンクロマトグラムを作成し、ピーク面積値と保持時間をリスト化するという方法がとれられています。試料間で共通するピークをまとめ、化合物情報(組成式、保持時間、構造情報等)と紐付け(同定し)て、多変量解析してデータの特徴を視覚化します。メタボローム解析では、試料全体の大まかな傾向を視覚化する主成分分析や、類似傾向をグルーピングして視覚化するクラスタリング解析がよく用いられています。