(13) LC/MS/MSを用いたプロテオーム解析:ショットガンプロテオミクスの手順 ③質量分析と解析

 ショットガンプロテオミクスの手順の最後に、ペプチド断片の質量分析とその解析の概要について解説します。

[3] 質量分析

 四重極飛行時間(Q-TOF)質量分析計またはキングドントラップ質量分析計(オービトラップ型質量分析計)など、高精度なハイブリッド質量分析計を用います。また、ショットガンプロテオミクスでは、データ依存性解析法(data-dependent acquisition, DDA)によってデータ収集がなされることが多いようです。

[2] HPLCによる分離で述べたように、試料は多様なペプチドの混合物ですので、ペプチドに由来する多数のイオン(プリカーサーイオン)が検出されます。データ依存的解析法では、あらかじめ設定した条件に従い、プリカーサーイオンに対するプロダクトイオンの情報を収集します。通常、スキャン測定で検出されたプリカーサーイオンの強度の大きい成分から順に、プロダクトイオンのスペクトルを取得します。そのため、質量分析計の性能により得られるスペクトルの数は大きく異なります。質量分析計で十分な数のスペクトルを取得できない場合には、HPLCでの分離に力を入れなければなりません(数メートルのモノリスカラムによる分離などの報告もあります)。

データ依存性解析法は、ノンターゲットプロテオミクスのような探索的な研究で有効な方法です。

また、特定のプリカーサーイオンのMS/MSスペクトルを得るだけではなく、ある一定の質量範囲(25 Da程度)のイオンすべてのスペクトル情報を得るデータ非依存性解析(data-independent acquisition, DIA)手法によるプロテオミクス研究も実施されつつあります。しかし、データ非依存性解析はプリカーサーイオンを絞るデータ依存性解析に比べ、原理的に感度面で劣りますので、より高感度な装置が必要となります。

[4] データ解析

 現在、データ解析はすべてシステムに組み込まれているので、改めて説明する必要はないと思われますが、簡単に仕組みを述べておくことにします。

 LC/MS /MSで得られたデータから、プリカーサーイオンとフラグメントイオンの情報が抽出され、実測のピークリストファイルが作成されます。

タンパク質の配列データベースから、酵素消化による理論的なペプチドのピークリストファイルが作成されています。

これらが比較照合され、統計的な処理などに基づくスコア化がなされ、ある基準以上のスコアのペプチドが、試料中に含まれるタンパク質として同定されていきます。

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