79.他社を見学するときになにを見ているか
現役の頃、他社さんをよく訪問させていただきました。
査察ももちろんありましたが、打ち合わせで行くようにしていたのは他社の研究所や工場です。本社でお偉いさんに会うのは、それはそれで意味はあるですが、選べるのであれば、出来るだけ現場に近い場所を私は希望しました。
生産現場では、私は2つの点にいつも注目していました。
1つはトイレ。現場では、最新のトイレでないところもありますが、トイレが明るくまた綺麗に掃除されているかを見ていました。ですから、マーキングではありませんが、打合せの前に必ずトイレを拝借しました。トイレはその会社の顔だと思っています。トイレが暗く清潔でないところはどんなに有名な企業さんでも、私はあまり評価していません。
もう1つは工場で働く一般社員の方々の表情です。声を出して、それもなにか自然な感じで挨拶をしてもらえると、とても気持ちがいいものです。少なくともその現場では大きな災害やトラブルはないだろうと感じさせてくれます。
大企業であればあるほど、技術・実績を前面に出して、このようなことが若干弱い傾向にあります。
(味の素さんがどうであったかどうか・・・)。
最近では、「研究所を新設したので、ぜひ見学に来てください」というオファーをいただきます。
先日、日本分析化学会の液体クロマトグラフィー研究懇談会の企画で、2022年11月に開所した大手分析受託センターの東レリサーチセンターの研究所にお邪魔しました。今年の大河ドラマの主人公、紫式部と縁の深い石山寺の近く、滋賀県大津市園山にあります。
https://www.toray-research.co.jp/
新しい研究施設を見学するときは、その会社の姿勢とか考えを感じ取るようにしています。もちろん立場上、安全衛生も気にしてしまいますが、どのようなポリシーで装置を導入しているかをみます。東レリサーチセンターは、昔から世界初、日本初、民間初の最新・高性能の大型機器を導入することで知られています。(当然、委託料は高額です・・・)HPにも「東レリサーチセンターは、常に最高レベルの技術力を追究し、多様な分析依頼に対応する、分析のプロフェッショナル集団です。発足以来40年にわたり、常に最新で最高性能の設備をそろえ、分析技術を進化させ、研究員の知識や技術の向上に邁進してきました。」とあります。
まさしく、新しい研究所にも最新鋭の装置が並んでいて、それが他の受託検査会社を圧倒する強みの1つであることを感じました。しかし、カネを出して装置を買えばいいというものではなく、それを使いこなす人、試料を装置に適切な状態にするための前処理ができる人、そういう人材がいてこその最新鋭の装置であり、そこにいる方々は確かに「最先端の人たち」がいることが、お話をしていてもよくわかりました。
もちろん、そこで働く方々は朗らかでしたし、トイレも清潔で、とてもよい雰囲気でした。