(32) 検査に用いられる統計の基礎知識 ③陽性尤度比
ここまで、感度と特異度、陽性的中率を説明してきました。陽性的中率は母集団の分布によって変化することも理解していただけたかと思います。
医療統計の教科書では、次に「陽性尤度比」という用語が出てきます。
「尤度」の読み方が分からず、このあたりで勉強を挫折してしまう人も多いのではないでしょうか。
「ゆうど」と読みます。
「もっともらしい」は漢字で「尤もらしい」と書きますが、尤度は「尤もらしい度合い」というになります。
それって確率では?と思われるかもしれませんが、考え方が確率とは逆です。ここではその説明を省いて先に進みます。
尤度とは、「ある結果(や観測データ)」が得られたときにその結果を生み出す「元となるパラメータ」はどれぐらいだろうか? ということです。
やはり、分かりにくいですよね。挫折の原因の一つです。
では、次のように言い換えてみたらどうでしょうか。
〇「ある結果(や観測データ)=陽性」が得られたときにその結果を生み出す「元となるパラメータ=本当に病気の人」はどれくらいいるだろうか ?そうです。これは「感度」のことですよね。
〇「ある結果(や観測データ)=陰性」が得られたときにその結果を生み出す「元となるパラメータ=病気ではなかった人」はどれくらいいるだろうか ?これは「特異度」のことになります。
つまり、「感度と特異度は尤度」です。
次に尤度比の説明をしましょう。
〇 陽性尤度比=(感度)/(1-特異度)
感度:本当に病気の人が検査陽性(真陽性)である尤度(真陽性率)
1-特異度:病気でない人が検査陽性(偽陽性)である尤度(偽陽性率)
〇 陰性尤度比=(1-感度)/(特異度)
1-感度:真に病気の人が検査陰性(偽陰性)である尤度(偽陰性率)
特異度:病気でない人が検査陰性(真陰性)である尤度(真陰性率)
陽性尤度比は、
・病気でない人に比べて、病気の人は何倍検査陽性になりやすいか、
・検査結果が陽性の人の中で、実際に病気Xの人がそうでない人に比べて、どのくらい陽性になりやすいか
陰性尤度比は、
・病気でない人に比べて、病気の人は何倍検査陰性になりやすいか
・検査結果が陰性の人の中で、実際に病気Xの人がそうでない人に比べて、どのくらい陰性になりやすいか
をそれぞれ示しています。
どうでしょう。
「尤度比」とても重要な指標のように思えてきませんか?