(43)シリーズ 「血液中のアミノ酸測定の標準化」の開始にあたって
血液中のアミノ酸濃度は、臨床検査では「アミノ酸分画」といわれます。
先天的アミノ酸代謝異常症の診断、肝機能不全の重症度判定や治療の指標、栄養状態不良の患者の病態把握などに有効で、これらには健康保険が適用されています。
ところが、実際に「身体の血液中と同じ状態・濃度のまま全てのアミノ酸を正確に測定する」ことは、簡単なことではありません。
採血から測定までの間に「アミノ酸濃度が変化してしまう」工程がたくさんあります。これまでその条件検討はほとんどされていませんでした。
1)採血・検体の管理~測定の各工程で、なにを注意しなければならないか
2)どれくらいの精度、正確さで血漿アミノ酸濃度は測定できるのか
3)ヒト血液中アミノ酸の正常な濃度範囲はどれくらいなのか
本シリーズでは、これらのポイントを解説していきます。
アミノ酸分析に焦点を絞っていますが、実は代謝物解析(メタボロミクス)の分析に共通するポイントがたくさんあります。多くの研究者や実務担当者に参考になると思います。
目次(予定)
① ヒトの身体にはどのくらいのアミノ酸があるのか
② 血液中のアミノ酸濃度は疾病判定や健康リスク診断に有効です
③ なぜ血液(血漿)中のアミノ酸はバイオマーカーとなるのか
④ アミノ酸分析計は正確無比!しかし測定時間が120分!
⑤ 9分でアミノ酸を正確に測定できる時代
⑥ 血液中のアミノ酸の測定は問題だらけ!?
⑦ 戦いは「いつ採血するか」から始まっている
⑧ 試料が血漿でなければならない理由
⑨ 採血直後からとにかく冷やす!
⑩ 除タンパク操作はこうする!
⑪ 内標準には13C, 15Nのラベル体を使う
⑫ 正確な定量に欠かせないSIトレーサブルな混合認証標準液
⑬ 初めて正確に求められた血漿アミノ酸の基準濃度範囲
⑭ 血漿アミノ酸には男女差や年齢で濃度変化するものがある
終了にあたって(参考文献紹介)