90.化学遺産「日本に現存する最古のアミノ酸分析計」

 世界には遺産とよばれる場所がたくさんあります。なかでも世界遺産は有名ですね。文化遺産と自然遺産に分かれていて、日本では、1993年に法隆寺地域の仏教建造物、姫路城、屋久島、白神山地に登録されたのを皮切りに、2023年10月現在で文化遺産20件、自然遺産5件の計25件の世界遺産が登録されているそうです。 

 ここで紹介するのは、「化学遺産」です。 

化学遺産とは社団法人・日本化学会の化学遺産委員会が日本の化学分野の歴史資料の中でも特に貴重な資料を遺産として認定するものです。「これらの資料を次世代に受け継いでいくと共に、化学分野の技術と教育の向上・発展に寄与すること」が目的で、昨年度までに67件が認定されています。 

 

先日、「日本に現存する最古のアミノ酸分析計(所蔵:株式会社日立ハイテクサイエンス)」がこの認定を受けました。
https://www.chemistry.or.jp/news/information/153.html 

 

アミノ酸についてはいまさら説明する必要もないと思います。アミノ酸はタンパク質を構成し、それらを測定することは、タンパク質の構造や性質を知るだけでなく、食品成分の理解や健康状態の把握などに欠くことが出来ません。 

アミノ酸を自動で分析する装置は1958年に米国で開発されました。その後、相次いで国内のいくつかのメーカーでも製造・販売されました。日本1号機は1962年に発表されたKLA-2形アミノ酸分析計です。当時はアミノ酸20種類の測定におよそ1日を要していました。各社及びアカデミアのさまざまな研究成果により測定時間が1時間をきることができたのは1977年のことで、日立の835形アミノ酸分析計という装置でした。 

KLA-2形が保存されていればそれが化学遺産となるべきですが、写真が残るだけで、現存するアミノ酸分析計で最も古いものが835形でしたので、これが遺産として認定されました。 

 

アミノ酸を容易に測定する装置がなければ、20世紀後半からの科学の進歩はありえないといっても過言ではなく、その歴史的な意義と価値を後世に残すために遺産という形でアミノ酸分析計を化学会が認定したことはとても素晴らしいです。 

遺産ですから「物」が認定されるわけですが、アミノ酸分析計の進歩に寄与してきた方々とアミノ酸分析を通じて科学を発展させてきた人たちが同時に表彰されたものだと私は考えています。 

Chemical heritage

アミノ酸分析計の歴史(日立関連のもののみ掲載)

https://www.hitachi-hightech.com/jp/ja/knowledge/analytical-systems/hplc/amino.html

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