66.ジペプチド分析④ フェニルイソシアネートと反応したジペプチドのマススペクトル

フェニルイソシアネート(PIC)という化合物はアミノ基と反応するので、ジペプチドにはそのN末端と反応します。この反応体(構造は下表をご参照ください)を「PIC-ジペプチド」と名付けることにします。

fig1

三連四重極型質量分析計で汎用性の高いエレクトロスプレーイオン化法(electrospray ionization, ESI)の正イオンモードを用いて「PIC-ジペプチド」を測定すると、ジペプチドの種類には関係なく、規則的な3つのプロダクトイオンが観察されます。

図はPICと反応したアラニルプロリン(PIC-Ala-Pro)のプロダクトイオンスキャンのマススペクトルを示しました。

スペクトル中にも記載した通り、プリカーサーイオン(PIC-Ala-Pro)、ジペプチドに由来するプロダクトイオン(Ala-Pro)、C末端側のアミノ酸がニュートラルロスしたプロダクトイオン(PIC-Ala)が検出されています。
味の素(株)では所有していた約400種のジペプチドについてこの方法で測定をし、その全てで上記のルールで開裂が起きていることを確認しています。

 

表に、構造と共にこれらのスペクトルのパターンを整理しました。

A) PIC-X-Y:アミノ基がPICと反応した(誘導体化された)ジペプチド
B) X-Y :PIC部分がニュートラルロスしたジペプチド
C) PIC-X :C未端側のアミノ酸がニュートラルロスしたPIC-アミノ酸

Table

さて、この開裂を利用すれば、ジペプチドの網羅的分析が可能になります。
どうすればよいでしょうか。みなさん、少し考えてみてください。

【引用文献】
陰山直子ら 分析化学 69, 173-178(2020) https://doi.org/10.2116/bunsekikagaku.69.173

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