152.科学の法則と社会
日常のちょっとしたことや社会現象が科学の法則どおりだと思うことがあります。
理系の人は机の上が片付けられないときに「エントロピーが大きくなるのは自然の法則だから」という言い訳を使います。
熱力学用語のエントロピーは、系の乱雑さや無秩序の度合いを表す物理量で、エントロピーが大きいとは系がより無秩序で、予測が難しい状態であることを示します。そして、「孤立した系のエントロピーは常に増大する傾向がある」というのが「熱力学の第二法則」です。ですから机の上が乱雑になっていくのは自然現象ということになります(か?!)
より身近に感じることができるものに、先週の分析化学Tipsで解説した「ル・シャトリエの法則」があります。
化学平衡の状態にある系に外部から変化を加えると、その変化を緩和する方向に平衡が移動するという原理・法則です。
社会でも変化に対してそれを押し戻そうとする力がしばしば働きます。
例えば行政が新しい制度やツールを導入しようとすると、現状を心地よい平衡状態と感じている人達の抵抗にあいます。組織の中にもありますよね。新しいことをしようとすると特に中間層の抵抗にあいます。変化を「打ち消そう」とする力、まさにル・シャトリエの法則的なふるまいです。
ル・シャトリエの法則は、日本人は「調和」や「安定」を重んじる文化・風土を表しているようにも思います。政治においても急激な変化を嫌う傾向があります。議席の事前予測が報道されると、ある勢力をあまり大勝ちさせてはいけないという投票心理が強くはたらきます。
さて、まもなく参議院議員選挙ですね。 国民はどう反応するのでしょうか?