162.一生の修行
先週のコラムでは、自作の名刺で、肩書ではなく自分の「していること、できること」をアピールしていると書きました。
これまでの経験や人脈を活かして社会に貢献したいという思いです。
しかし、意欲的に新しくなにかを学んだり、更に経験を重ねたりして「上積み」を目指すというスタンスはありません。経験を活かすと書きましたが、月日が経つとその記憶が都合のいいように書き換えられ単純化されていて、助言した内容が現状にあっていなかったり背景が全く異なることに対してだったりしていて、かえって迷惑をかけてはいまいかと不安になり、控えめになろうとしている自分に気がつくことがあります。
こんな私ですが、否、こんな私だからこそかもしれませんが、年齢に関係なく進取の気性をもち、現役を続けられている方を心から尊敬します。
プロ囲碁棋士の杉内寿子九段をご存じでしょうか。
杉内九段は囲碁の最年長対局記録を保有しています。なんと98歳4か月4日、2025年7月10日の対局でした。
ご存じの通り、現在では囲碁はAIでの学習・検討が主流で、それなくしてはプロとしての棋力の向上は難しいようです。囲碁は年齢、性別に関係なく段位や対局があるので、10代の棋士との対戦もあります。そのような状況の中でプロ棋士として対局を続けてこられました。畏敬の念を感じずにはいられません。
残念ながら杉内九段は先日8月20日で引退され、コメントが新聞に掲載されていました。
「『碁は芸道にして一生の修行』を信条に今日まで励んで参りましたが、6時間休憩なしの対局は、これ以上無理と判断いたしました。棋士を志してより80余年、多くの方々にご厚情を賜り深謝申し上げます」
年齢を気にしながら、限界のようなものを自ら定めて一歩引いている自分の振舞いや心構えが恥ずかしくなります。
ゼロから成功や失敗のポイントを重ねて現在がありますが、ゴールなどはないのです。
今日よりも明日、真摯に日々、何かを学んで吸収して、なにかを発信して、反省し、考え、それを積み重ねていくことが大切だとあらためて考えさせられます。
なにごとも「一生の修行」です。 日々新たに、前進を。