(24)いまさら聞けない「モノアイソトロピック質量」と「分子量」
水素、炭素、窒素、酸素の原子量、各同位体の精密質量とその天然存在比を示しました。
モノアイソトピック質量とは、分子を構成する各元素の天然存在比の最大の同位体である主同位体の質量で計算した精密質量(exact mass)のことです。
例えば、アラニンというアミノ酸の組成式はC3H7NO2ですから、アラニンのモノアイソトピック質量は、
12.000000(12C)×3 + 1.007825(1H)×7 + 14.003074(14N)×1 + 15.994915(16O)×2=89.04768と計算されます。
一方、分子量は天然同位体の平均値で計算されるものです。上の表の原子量の合計が分子量になりますので、アラニンの分子量は、
12.0108 (炭素)×3 + 1.00794 (水素)×7 + 14.00674 (窒素)×1 + 15.9994 (酸素)×2=89.09352となります。
質量分析では、同位体ごとの総和がスペクトルの中に表れますから、モノアイソトピック質量検出され、普通はそれが最大強度となります。
アラニンのような低分子ですと、モノアイソトピック質量も分子量も大きくは違いませんが、炭素や水素の数の多い化合物(いわゆる高分子化合物)になると、モノアイソトピック質量と分子量に差が出てきますし、質量分析のスペクトルも複雑になってきます。
精密質量は、その化合物を構成する元素の種類と数が推定でき、構造解析に有益な情報となります。
水素、炭素、窒素、酸素以外の代表的な元素の原子量、各同位体の精密質量とその天然存在比も紹介しておきます。