131. 聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥
知らないのに、ついつい知ったふりをしてしまうことがあります。知らないことは恥ずかしいこと、反射的に頭と口が反応してしまいます。年齢を重ねて少し「立場」が出来てくるとその傾向が強くなるようにも思います。「そうだったかな。」などと上手い(上手くないか?!)誤魔かすテクニックを身につけます。
以上、私の懺悔でした。
さて、突然ですがここで問題です。
「アミノ酸はアミノ基と○○基をもつことを特徴とする物質です。○○にはなにが入るでしょうか。」
少しでも化学の知識のある方には簡単な問題です。ましてやアミノ酸研究に携わっていた人は秒もかかりません。バカにするなと思いながら「カルボキシル」基と答えるでしょう。私もそう答えました。
実は「カルボキシル」基は正しくありません。
少し専門的になりますが、IUPAC(アイユーパック)という国際機関があります。国際純正・応用化学連合(International Union of Pure and Applied Chemistry)の略で、化学分野の学術的な教育研究を行う国際組織で、化学の用語や記号、概念や定義を国際的に統一する役割を担っています。
そのIUPACで、従来「カルボキシル基」といわれていたものを「カルボキシ基」に統一するというルールが定められていたそうです。ですから、先ほどの正解は「カルボキシ」基となります。
それが決められたのは1993年のことだそうです・・・
私はこれまでカルボキシル基と表記した何十・何百も原稿を書いてきましたし、このサイトのHPのTipsにもたくさん「カルボキシル基」が出てきます。今更、知っていたふりは出来ません。これを知ったとき、恥ずかしさを通り越して、衝撃が走りました。私は化学の基本的な用語の変更を知らずに30年以上、それにかかわる仕事をしてきたことになります。
唯一の救いは、「一生の恥」は免れたという点でしょうか。
因みに現在の教科書はすべて「カルボキシ基」となっているそうです。「カルボキシル基」と答える人は40歳を超えた人=若者ではない!?と判定されるそうですよ。