172. 学会の利用方法 ―分析化学会年会に参加して感じたこと―

 

先日、日本分析化学会の第74年会が北海道大学でありました。

年会では毎回、企業のメンバーが企画する「産業界シンポジウム」が開催されます。

「産業界シンポジウム」については、本コラムの1回目「企業の分析化学、国力としての分析化学」で紹介しましたが、シンポジウムを企画することが唯一の目的というわけではなく、産官学連携の場の提供(産業界の先端的研究の紹介)、産が発表・参加しやすい環境づくり(会員拡充)、学生と産の交流(Matching)を目指しています。実は本部(当時の会長、副会長、ともにアカデミア)主導で始められ、その後企画運営委員のリーダーシップのもとで拡大していきました。

 

今年のテーマは「分析化学におけるスマートラボ化」

ご興味のある方は、URLをご参照ください。
https://pub.confit.atlas.jp/ja/event/jsac74nenkai/content/industry_symposium

 

産業界シンポジウムは毎回盛況で、今年も会場後ろにずらっと立見が出来ました。その集客力に学会執行部や事務局がとても驚いていて、「なぜこんなに人気なのか?」と質問を受けましたが、理由は簡単です。

一つはテーマが具体的であること、もう一つは企画運営委員が、自分たちが今一番知りたい、聞きたいことをテーマにして、話してもらいたい人をチョイスしているからで、その委員会のベクトルが企業で分析に携わる人のベクトルと一致しているからです。

 

一企業単独では実施が難しい企画でも、学会という後ろ盾があれば出来ることがあります。学会というオープンな場でシンポジウムを行うことで、企画運営委員はもとより、参加者であっても通常では接点のもてない講演者とつながりができます。

 

アカデミアは産学連携が大切といいますが、企業がそう思っているとはかぎりません。それについてはいろいろと議論はあるかと思いますが、堅苦しいことは横に置いて、人と人が交わることで新たな知恵が生まれることは間違いありません。産・産であろうと産・学であろうと、知合いを紹介しあって輪を広げていくことが学会のイベントの意義と考えます。

 

懇親会などもまさにそのためのもので、仲間内と駄弁りながら飲んで食べてをしているだけの人たちを見ると、もったいないとつくづく思います。

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