(07)タンパク質のアミノ酸組成を調べる:加水分解
今回は、タンパク質の加水分解について説明します。
タンパク質のアミノ酸組成を調べるためには、ペプチド結合をすべて切断して、アミノ酸一つずつバラバラにします。強酸、高温条件で一昼夜反応させる酸加水分解で、ほとんどのアミノ酸が構造を保持したまま遊離しますが、いくつかのアミノ酸残基は構造変化してしまいます。
ここでポイント、分子内に硫黄原子(S)が含まれているシスチン、メチオニン(含硫アミノ酸)は、酸化されやすいので、事前にSを酸化させておきます。トリプトファンは酸では分解してしまうので、塩基性条件で加水分解をします。
また、いずれの方法でも、グルタミンはグルタミン酸に、アスパラギンはアスパラギン酸となります。そのため、アミノ酸組成分析のグルタミン酸はタンパク質中の「グルタミン+グルタミン酸」をアスパラギン酸は「アスパラギン+アスパラギン酸」の値として得られます。
では、加水分解の具体的な手順を以下に紹介します。
1)一般的な酸加水分解
1.封菅の出来る分解菅に試料を秤量して、タンパク質の約1000倍量の6 mol/L 塩酸(0.04 % β-メルカプトエタノールを含む)を加える。
2.分解菅内を減圧して封菅する。
3.110 ℃、24時間もしくは、145 ℃、4時間で加水分解を行う。
4.分解管を開封して、塩酸を除去し乾固する。
5.0.02 mol/Lの塩酸で溶解し、0.45 μmフィルターで濾過したものを測定溶液とする。
2)シスチン、メチオニン(含流アミノ酸)を測定のための加水分解
1.ナスフラスコに試料を秤量し、タンパク質の約1000倍量の過ギ酸(30 %過酸化水素水と83 %ギ酸を、1:9で混合)を加える。
2.冷水中で一晩放置する。
3.用いた過ギ酸の1/3量の48 %臭化水素酸を加えた後、減圧乾固する。
4.試料を封菅出来る分解菅に入れ、6 mol/L塩酸を加え、1)と同じ手順で測定溶液を調製する。
3)トリプトファン測定のための加水分解
1.封菅の出来る分解菅に試料を秤量し、4.2 mol/L 水酸化ナトリウム水溶液を加える。
2.窒素バブリングを十分した後、封菅する。
3.110 ℃、20時間加水分解を行なう。
4.分解管を開封して、20 %塩酸でpH 4.2に調整、定容し、0.45 μmフィルターで濾過したものを測定溶液とする。
いかがだったでしょうか? タンパク質の加水分解について、理解が深まれば幸いです。