(09)タンパク質やペプチドのN末端アミノ酸の同定

タンパク質やペプチドのN末端のアミノ酸を同定する方法としてエドマン分解が有名です。 

質量分析計やその技術の進歩に伴い、アミノ酸の配列解析が容易となっていますが、ゲノムデータベースのタンパク質は前駆体タンパク質として登録されているので、成熟タンパク質の N末端を同定することは、タンパク質の機能を解明する上で重要です。また、質量が同一のアミノ酸(ロイシンとイソロイシン)や近いアミノ酸(リジンとグルタミン)も、エドマン分解による解析で、容易に区別・同定できます。これもこの方法の利点といえます。 

ここでは、エドマン分解の原理を紹介します(図)。 

図 エドマン分解の原理(参考情報より引用) 

 

エドマン分解は2段階の工程があります。 

第一段階:フェニルイソチオシアナート(PITC)との反応 

微アルカリ性溶液中で、N末端アミノ基とフェニルイソチオシアネートが反応し、フェニルチオカルバモイル化されます。 

第二段階:N末端のフェニルチオカルバモイル化アミノ酸の閉環、脱離 

酸性溶液中でN末端アミノ酸はフェニルチオヒダントインアミノ酸(PTH-アミノ酸)となり、タンパク質から遊離します。 

PTH-アミノ酸をHPLCなどで測定することにより、N末端アミノ酸が同定されます。 

また、N末端アミノ酸が1残基除去されたタンパク質は回収できます。これをPITC化することでエドマン分解は繰り返され、N末端からのアミノ酸配列を連続的に同定することが可能です。このため、エドマン分解は、逐次アミノ酸配列決定法とも言われます。 

エドマン分解は1949年に開発されたもので、用手法での解析も可能ですが、最近は気相法による自動化解析装置(プロテインシークエンサー)での解析が一般的に行われています。 

これについては、参考情報を参照してください。 

【参考情報】 

富士フイルム和光純薬:エドマン法 (プロテインシークエンサー/PPSQ )

栗木 智子 他 : 和光純薬時報, 86(4), 6-7 (2018). 

 

 

 

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