(26)いまさら聞けない「内標準法」
今回は、内標準法について、少し掘り下げて説明します。
内標準法はLC/MSではよく用いられますが、まず一般的な特徴を列挙しておきましょう。
- 試料注入量の誤差が補正できる
- 分析条件が測定値に与える影響が補正できる
- 光源ランプの劣化等検出器の変動、イオン化状態の変動、移動相の送液量の変動やグラジエントの変動、移動相組成の変動、試料の蒸発などの補正が可能
- 前処理過程における誤差が補正できる
- 試料の抽出・クリーンアップを行なう前に添加することで、添加後の全ての操作における損失やばらつきの補正が可能
一方で、内標準物質を選ぶ際には、以下の条件を考慮しなければなりません。
- 試料マトリックスに存在しないこと
- 分析試料に含まれている夾雑成分のピークと十分に分離されること
- 溶出挙動/特性、検出特性が分析種と大きく異ならないこと
- 安定性が良いこと
- 移動相溶媒に対する溶解度が十分であること
内標準法はLC/MSではよく用いられていると書きましたが、これは、
〇 LC/MSが夾雑物の多い生体試料の測定に用いられること
〇 LC/MSではマトリックス効果の影響を受けやすいこと
〇 MSを用いているので、内標準物質と測定成分とをカラムで分離する必要が必ずしもないので、内標準物質の選択の幅が広いこと
が主な理由と考えられます。
さて、内標準物質に何を用いるかは、その分析の成否にかかわる重要な選択です。
LC/MSでは、測定したい成分を安定同位体の水素(2H)や炭素(13C) 、窒素(15N)でラベルしたものを内標準物質として添加することができます。これをサロゲート(surrogate)といいますが、サロゲートはその成分とほぼ同じ物理化学的性質ですから、前処理で対象成分と同じ挙動を示しますし、溶出時間も同一かほぼ同じです。しかし、質量が異なるため、LC/MSでは異なるピークとして検出されます。そのため、LC/MSでの定量の補正には、大変適しているといえます。
LC/MSでの内標準物質には、13C或いは15Nが3つ以上含むサロゲートを用いることを推奨します。
2HでラベルしたものはLCで保持時間がずれてしまい、少なからず誤差の原因になります。また、測定したい成分にも同位体は含まれていますので、それとサロゲートが重ならないように、同位体原子3つ以上でラベルしたサロゲートが望ましいといえます。
ただ、13C或いは15Nでのラベル体は少々費用がかさむことが欠点です。