(42)続・検査で用いる統計 ③なぜオッズを使うのか(その2)
なぜオッズという概念が重要か?
そのもう一つの理由は、母集団の大きさでリスク比は変化してしまうが、オッズ比は変化しないからです。
リスクとリスク比の説明で下の表を出しました。
少し極端な例で恐縮ですが、がんの患者さんも100人集めることが出来て、喫煙者と非喫煙者の割合は同じく1:1であったケースを考えましょう。
その場合のリスク、リスク比、オッズ、オッズ比は下表のようになります。
お分かりですか。オッズ比だけが変わりません。(OR=4.0)
リスク比は、調査の参加人数によって変化してしまいます。(RR=3.0 → RR=1.85)
検査の有効性研究や疫学研究における「後ろ向き研究」の解析にはオッズ比が必須です。
後ろ向き(といってもネガティブなことではありません)があるから「前向き研究」もあります。まず、前向き研究の説明をしましょう。
前向き研究とは、例えば、現在健康な人だけを1,000人選び、特定の疾患を発生したかどうかを追跡調査し、発症にどのような因子が関わっていたかを解析する方法で、コホート研究といいます。
「アルツハイマー病と食生活、国内最大規模1,200人を10年追跡…島津製作所・北海道江別市が共同研究-発症リスクを減らす食事や予防につながる生活習慣を明らかにすることを目指す。」
最近、このような新聞記事がありましたが、これが前向き研究です。 この手法では、調査の母集団の数が最初から決まっているので、リスク比で疾患と因子との関係を評価できます。(もちろんオッズ比も使えます。)
一方、後ろ向き研究は、現在健康な人と現在特定の疾病をもつ人をそれぞれ集めます。例えば、現在がんの人とそうでない人を集めて、因果関係がありそうな因子(過去の喫煙履歴など)を調べる手法です。過去を調べるから後ろ向きということですね。ケーススタディともいいます。
上の2つの表は、後ろ向き研究の事例と考えることができます。がん発症者の喫煙率は2つの表で同じでしたが、集めることのできた人数でリスク比は異なってしまっていました。ですから、後ろ向き研究の解析・評価には、オッズとオッズ比を用いなければなりません。