108. 博士を育てる

「末は博士か大臣か」

このような言い回しはもう使われません。子どもに対して、将来は博士や大臣のような立派な人になってほしい、という期待を表した言葉でしたが、少なくとも大臣が立派な人だとは認知されなくなりました。

博士はどうでしょうか。その人が博士号に値する進歩的な研究をしたことは間違いないでしょう。

 

私事ですが、「理系に進んだなら博士を取れ」と父親に言われ続けていました。父親も技術系で、大学に残って研究を続けたかったようですが、家庭の事情などで進学を諦めた人でした。私は博士課程には進みませんでしたが、社会人になっていわゆる論文博士で学位をとりました。父親にそのことを報告した時が、彼が私に対して1番嬉しそうな顔した瞬間かもしれません。

研究のマネージャーになって、私の部下で博士になった人は7~8人はいるのではないかと思います。比較するものはありませんが、かなり多いと自負しています。論文を書くことや博士号を取得することを推奨していましたし、いろいろな形で支援していました。残念ながら、優れた研究成果をあげていたのに取れなかった人たちもいます。

 

さて、日本では博士課程に進学したり、博士を取得したりする人が減少しています。

個人的には、博士課程まで進学した人が会社に入ってくれることは大歓迎です。数年間研究室で揉まれ、論文を仕上げてきた経験は大きいと考えています。

社会人になると、社外発表する機会が少なくなり研究を論文にまとめる時間も取れなくなりがちです。しかし、論文を書く力は、研究者として対外試合が出来る力です。研究を論文にまとめ上げる努力をした人は、個人として成長し、会社にとっても重要な存在となります。

 

研究者個人の努力はもちろん重要ですが、社会人でも博士を取りやすい環境がもっと醸成されることを期待しています。
これには会社、大学双方が積極的になる必要があります。会社とアカデミアが連携して、博士号にふさわしい人を育て増やしてほしいと考えています。

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