(36)検査で用いる統計 ⑥ROC曲線とAUCの意味(後編)
前編では、ROCもAUCも説明しませんでしたが、図3で説明したとおり、検査値のどこに線を引くかで感度と特異度が変化することは理解していただけたかと思います。
この変化をグラフにすることができます。
〇 横軸に偽陽性率、実際には疾患がない人が陽性と判断される割合=1-特異度
〇 縦軸に真陽性率、実際に疾患がある人が陽性と判断される割合=感度
をそれぞれの値でプロットします(図4)。
(感度、1―特異度は、陽性尤度比に出てきた用語ですね。)
このグラフをご存じの方も多いのではないでしょうか。
これをROC曲線(Receiver Operating Characteristic curveの略)といい、検査の性能を2次元のグラフに表したものです。
前編の図2であれば、このような曲線にはならず、図の左上、座標(0, 100)のポイントのみとなります。
この曲線(プロット)が原点を通る45度の直線になった場合は、検査性能がない、その検査はその病気に対しては当たるも八卦当たらぬも八卦となります。少しでも有効性のある検査では、プロットはこの直線よりも上側にいきます。 図4は文献からの引用で2種類の検査(解析方法)を評価したものです。どちらの方法も有効な検査ですが、黒線がより性能がよいということになります。
また、AUC(Area Under Curveの略)とはROC曲線の下の面積です。
先ほど述べたようなROC曲線が座標(0, 100)のポイントだけのとき、表の全てがAUCとなりその値は1.0、ROCが原点を通る45度の直線ときのAUCは0.5です。
すなわち、AUCは0.5から1.0の値をとり、よい判別能を示す検査であればAUCの値は大きくなり、最大値1に近づきます。
薬学の方は、AUCという用語を血漿中薬物濃度の時間推移のグラフで目にしたことがあるでしょう。そのプロット線下の範囲がAUCで、時間経過に伴う血液中の薬物の総量になります。同じAUCでもここでの意味とは全く異なります。
(注)図4はLung Cancer, 2015 Dec;90(3):522-7. doi: 10.1016/j.lungcan.2015.10.006. Epub 2015 Oct 23のFig2を引用しました。