112. 自分の講演を解析して反省してみる

 ご批判は重々承知ですが、私は試験が苦手ですし、また研究者として大変なコンプレックスがあります。 

 大学院修士の試験に落ちて、研究室の先輩方からは「大学院に落ちた人間は一生研究者としては認められない」と言われたことが、研究者としてのコンプレックスの始まりです。先生や親の恩情で研究生を続けて、一年遅れて修士課程に進学しましたが、その言葉は私の頭に残り続けています。 

 味の素(株)に入社しましたが、当時は社会的にも評価の高い研究者が集まっていましたので、私はそこでも委縮した研究生活を過ごしていました。偶然にも共同研究者が有益な発見・発明し、また、私たちの技術が鍵となる新規ビジネス立上げの一翼を担うことができました。その研究リーダーだったおかげで、私はいろいろと賞もいただき、今でも年に数回、講演を依頼されます。 

さて、私の講演の欠点は、謙虚さに欠けるところだと認識しています。 

 くだんのコンプレックスの裏返しか、「これは私が日本で初めて始めたことです」というスライドがいくつかあります。嘘はないのですが、「はしたない」とは思っています。しかし、先輩を見返したという気持ちがついついそういう形で出てしまいます。

 

先日は日本アミノ酸学会で基調講演を依頼されました。先週書きましたとおり、コロナに感染して急遽自宅からzoomで発表しましたが、あらためて、学生時代からの仕事を見返すいい機会をいただきました。 

今回、味の素社のキーパーソンとなった共同研究者の顔写真を、それぞれの業績を紹介するスライド内にはめ込んでみました。紹介できたのはごくごく一部の方でしたが、それでも多くの優秀な人と一緒に仕事を出来たことをなつかしく、改めて私の感謝の気持ちでいっぱいになりました。そして、もう少し謙虚になろうかと思いました・・・ 

 

 余談ながら、私の講演と同じ題材で共同研究者が発表すると、とても科学的で格調高いものになります。それを聞くと、(当たり前の話ですが)一連の仕事が科学的に裏打ちされたものだったのだと気づかされます。

 

 私の場合は科学的要素を出来るだけ省略して深入りしません。これも科学的劣等感からくるものでしょうか。そのかわり、「自分一人では何もできず、人とのかかわりが重要である」ということを強調する人間味あふれる?内容で、それに共感していただける方も多いようです。 

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