(10)プロテオーム解析ってなに? 

 プロテオームとは、一般的には生物試料中の全てのタンパク質のことですが、 それらを解析することをプロテオーム解析或いはプロテオミクスといいます。 

 プロテオーム解析は、「目的」によって、ノンターゲットプロテオミクス(網羅的プロテオーム解析)とターゲットプロテオミクス(フォーカストプロテオーム解析)の2種類に分けられています。 

ノンターゲットプロテオミクス: 

細胞や血液組織中のタンパク質を網羅的に同定・解析 

一度に多くのタンパク質を検出することが出来、発現量の高いタンパク質ほど同定されやすい傾向がありますが、再現性や定量性は一般的にはあまり高くありません。 

ターゲットプロテオミクス: 

疾患関連タンパク質、特定の組織器官で発現するタンパク質、リン酸化タンパク質や糖タンパク質など特定のタンパク質群に焦点を当てた解析 

一度に検出されるタンパク質の数は少ないが、ターゲットを絞っているので、高い定量性と再現性を得ることが可能です。 

 

 また、プロテオーム解析の「アプローチの仕方」によって、トップダウンプロテオミクスとショットガンプロテオミクス(または、ボトムアッププロテオミクス)2種類に分けることができます。 

図にトップダウンプロテオミクスとショットガンプロテオミクスのスキームを比較しました。 

図 ショットガンプロテオミクスとトップダウンプロテオミクスについて 

トップダウンプロテオミクス: 

インタクトタンパク質を直接質量分析計に導入し、その精密な質量情報と直接質量分析内で断片化して得られるフラグメントイオンの質量情報から、タンパク質の同定と翻訳後修飾などの情報を得るアプローチです。 

最近の質量分析計では、分子量が数万から10万を超えるような大きなタンパク質を直接測定することが可能で、翻訳されたタンパク質そのものを観察することができるようになってきました。バイオ医薬品などの領域においても、質量分析計によるトップダウンプロテオミクスの手法が広く使用されています。 

ショットガンプロテオミクス: 

LC/MS/MS による代表的なタンパク質の網羅的解析法で、タンパク質をそのまま検出するのではなく、トリプシンなどの酵素でタンパク質をペプチドに消化し、LC/MS/MSで測定するアプローチです。得られたスペクトルデータをタンパク質のアミノ酸配列データベースと照合して、ペプチドやタンパク質の同定を進めていきます。 

LC/MS/MSによるショットガンプロテオミクスでは、目的に合わせてさまざまな前処理、測定、データ解析の手法が用いられており、新しい手法が今もなお次々と開発されています。 

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