(01)LC/MS/MSを用いたメタボローム解析:概論
メタボローム解析とは
「メタボローム」とは生体内の全ての代謝産物のことで、それらを解析することをメタボローム解析或いはメタボロミクスといいます。
メタボローム解析は、生体試料(血液、尿、組織、細胞など) に含まれるおよそ分子量1,000以下の低分子代謝物を対象としています。メタボローム解析は、ゲノム解析やプロテオーム解析に比べて対象となる化合物(代謝物)の種類が少ないこと、種差がないことなどが特徴です。
メタボローム解析のアプローチ方法
メタボローム解析には、ターゲット解析とノンターゲット解析があります。
ターゲット解析では、重要な代謝物として選択しておいた対象のみを測定します。それらに標準物質があれば、代謝物を定量することが出来るので、試料間の代謝物の濃度の違いを正確に比較することができます。
ノンターゲット解析では、基本的には生体試料を分析して観測される全ての代謝物を測定対象とします。メタボローム解析では代謝物の種類が少ないことが特徴と先ほど書きましたが、LC/MS/MSによるこのアプローチでは、同定されていない成分が非常に多く観測されてしまいます。そこで多変量解析など統計処理をして試料間で有意な差のあるものを見出して、構造決定をしていきます。例えば、疾患で変動するバイオマーカーの探索研究などには、このアプローチが用いられています。
LC/MS/MSによるメタボローム解析の手順
メタボローム解析は、試料中の代謝物を抽出するための前処理を行い、LC/MS/MSで分離・検出して、データ解析を行うという流れになります(図1)。
もちろん、HPLC以外のさまざまな分離方法も有効です。キャピラリー電気泳動やガスクロマトグラフィーがその代表です。
図1.メタボローム解析の流れ
次回は、LC/MS/MSによるメタボローム解析の手順で最も重要な前処理について、解説していきます。