51.研究マネージャーになりたての頃の話
帰り支度をしていると、「ちょっといいですか。」と話しかける部下がいました。
その日の実験データを私に見てもらいたいようです。この時間に来なくてもと、心の中では叫んでいるのですが、その言葉はもちろん押し殺します。
ところが、このような場合、面白い(interesting)と思える結果が意外と多いものです。だから部下もがんばってデータをまとめて(当時は印刷して)私のところに来るのだし、私もプロ(?!)ですから、数分その話を聞けばそれがわかります。
さて、次に私は何をしたでしょう?
まだ職場に残っている2~3人の研究者を集めて、私がたった今説明を受けて理解したことを、白板に書きながら説明するのです。(20年以上前ですから白板ですし、印刷機能ありませんでした。)
教訓その1 人に説明すると、自分の頭が整理される。
さらに、私がそのまま進行役をして議論を進め、書記も兼任して板書していきます。
「三人寄れば文殊の知恵」といいますが、次にこの実験をどのように進めればよいか、何が不足しているか、もちろん私が気のつかなかった意見もたくさん出てきます。で、それを書いていきます。板書は混み入っていてもかまいません。
教訓その2 議論はその場で文字化する。
大切なことは、その場で文字にして、皆で共有することです。言葉だけですと、どうしても個人個人で思い込みが出て、ズレのようなものが生じてしまいます。
方向性が出て役割分担が出来た段階で、白板の写真を撮って、終了。白板に書かれた内容が、大げさに言えば、グループ長の見解であり今後の方針となります。そして次の日の朝から行動に移せます。
こういうプロセスを経て、いい研究結果がいくつもうまれました。少しでも参考になれば、幸いです。
そうそう、大切なことをもう一つ。
教訓その3 部下から話しかけられたら、短時間でもいいからその話を聞く
「もう帰るから、明日よろしく!」と言っては絶対にいけませんよ。