(22) いまさら聞けない「誤用しやすいHPLC用語」
今回は間違いやすいHPLC用語について解説します。
1.「クロマトグラフィー」と「クロマトグラム」と「クロマトグラフ」
クロマトグラフィー:測定方法
クロマトグラム:測定結果の記録・図
クロマトグラフ:装置
「高速液体クロマトグラフィーにより、○○中の成分Aを定量した。
装置には○○社製の高速液体クロマトグラフを用い、図に示すクロマトグラムが得られた。」
が正しい記述となります。
2.Signal to nose ratioの略称はSN比またはS/N
SとNの間にスラッシュを入れて、S/N比という表現が散見されますが、
これでは「/」と「比」が重複するので、「エスエヌヒヒ」となってしまいます。
3.m/z の読み方はエム オーバー ジー
以前は、“質量電荷比(mass to charge ratio)”が用いられてきたが、現在は推奨されていません。
m/z は、イオンの質量を統一原子質量単位で割り、更にイオンの電荷数で除して得られる無次元量と定義されています。
JISには注記として以下の記載があります。
「 “質量電荷比(mass to charge ratio)”と言う用語は、推奨しない。
マススペクトルの横軸の量は、イオンの質量をイオンの電荷で除した商ではないので、質量電荷比ではなく、m/z(エム オーバー ジーと読む。)を推奨する。
m/zの数値を示す場合は、m/z=100の様に等号を用いるよりも、m/z 100の様な表記を推奨する。
表記は、必ず小文字の斜体(イタリック体)で、空白を挿入しないで記述する。マススペクトルの横軸に用いられる。」
4.LC/MSは分析法、LC-MSは分析装置
LC/MSは、liquid chromatography/mass spectrometry(液体クロマトグラフィー質量分析)の略号で、液体クロマトグラフと質量分析計とを結合した装置(LC-MS)を用いて行う「分析法」のことです。
一方、LC-MSは、liquid chromatograph-mass spectrometer(液体クロマトグラフ質量分析計)の略号で、液体クロマトグラフと質量分析計とを結合した「分析装置」です。
5.LC/MSもLC-MSも読み方は、エルシー エムエス
ついつい、エルシー マスと呼んでしまいますが、それは誤りです。
同様にLC/MS/MSとLC-MS/MSの読み方も、エルシー エムエス エムエスであり、
エルシー マス マスではありません。
引用文献
1) JIS:K 0136:2015 高速液体クロマトグラフィー質量分析通則、日本規格協会 (2015)