91.全人類のゲノムは99.9%共通

 以前、「がんばるは夢中に勝てない」というある人の言葉を紹介しましたが、磯田道史氏はまさにそれを体現している代表的な一人であり、また、引き出しの多さに、いつも驚かされます。同氏の「磯田道史と日本史を語ろう」(文春新書)は、歴史に造詣の深い日本を代表する知識人たちとの対談集で、その聞き手として、彼の魅力がいかんなく発揮されています。書の中で、個人的には「日本人の不思議な起源」(篠田謙一・斎藤成也両氏との対談)に、特に惹かれました。古代人の遺伝子解析、特に日本人の成り立ちについての対談です。 

 

対談そのものは2013年におこなわれていたものでしたので、その後の研究の進展も知りたくなり、2022年に出版された篠田謙一氏の「人類の起源 古代DNAが語るホモ・サピエンスの「大いなる旅」」(中公新書)も続けて拝読しました。こちらも大変面白く、一気に読んでしまいました。 

 これらを通じて、2022年のノーベル生理学・医学賞「ゲノム比較によって、現代人のゲノムに絶滅したネアンデルタール人やデニソワ人の遺伝情報の一部が残っていることを明らかにした」研究の価値・意義、を恥ずかしながら始めて理解できました。 

 

 そして、同書で篠田謙一氏が強調されている以下の2点は、たいへん印象的で、共感しました。 

世界中に展開したホモ・サピエンスは遺伝的には殆ど同一(99.9%が共通)といってもいいほどの均一的な集団である 

「すべての文化は同じ起源から生まれたものであり、文明の姿の違いは、環境の違いや歴史的経緯、そして人々の選択の結果である」 

 

 分子人類学者である氏の世界に向けた強いメッセージです。世界の人々がこの認識と視点をまずは正しく有するべきです。
これらが浸透するまでにはかなりの時間を要すると思いますが、そうなることで世界情勢が変わってくるのではないかと願わないではいられません。 

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