(62) 問に答えます シリーズ「血液中のアミノ酸測定の標準化」
このシリーズで述べてきた「アミノ酸分析の標準化」について、いくつかご質問をいただきました。
代表的なものに、
「これは、「すべての」アミノ酸について使うことができるのか?」
というものです。
タイトルにもありますとおり、試料がヒト血漿であることが前提です。
しかも、その中で比較的濃度の高い代表的な21種類のアミノ酸について、サンプリングから前処理を経て測定までをバリデートしたに過ぎません。血漿以外の試料や血漿中の他のアミノ酸で同レベルの質の高い測定結果が得られるかの確証はありません。
言うまでもなく、あらゆる試料のあらゆるアミノ酸に関して、オールマイティで完全な前処理や測定があろうはずもありません。
私たちの検討結果、論文化された手順・方法が、他の試料のアミノ酸分析やその他のアミノ酸の測定に大いに参考になるとは思います。しかし、私たちはそれ以外の手順・手法を使うことを否定するものでもなく、もちろん否定などできません。
しかし、このシリーズで示したような点を検証しておかなければ、アミノ酸の数値が生体内の状態を反映したものなのか、アミノ酸の変動が生体内の変化を示したものなのか、そうではなくて単にサンプリング後の操作や装置の影響によるものなのかがわかりません。
これは、アミノ酸だけでなく全ての代謝物の測定において同じことが言えます。
私は、その試験法に関わる以下のことを示した上で、結果に対する考察をしてもらいたいと考えています。そうしなければ、そのデータの評価のしようがありません。
- 試料の種類
- サンプリングから前処理までの全ての手順と温度管理の状況
- 全ての試薬、装置
- 前処理から測定までの試験法バリデーションの結果
- 用いた標準物質
- 内標準物質
- 装置の稼働性能(適切なシステム適合性試験の設計と結果)
- QC試料の種類、測定のタイミング、その結果
専門家が見れば、これ以外にも示してほしい指標があるかもしれませんし、他に代替えできるものがあるのかもしれません。
メーカーが推奨する方法を用いたとか論文を参照にしたというだけでは不十分です(話になりません。)言い方は悪いですが、科学的、分析的に「テキトウな」データが出回ることを避けるのは、分析に携わるものの使命と考えます。