173. 高額な装置を購入する時の考え方
先日、企業の分析解析部門のマネージャーの集まりがあり、「大規模研究施設(例えばナノテラス)や外部施設の利用」に関するグループディスカッションに参加しました。
- 外部施設を効果的に利用して、内部での高額な設備投資を避けつつ高度な研究を行いたい
- 大規模研究施設を利用して社外有識者との議論をしたいが、社内に専門的な知識とスキルを持つ人材が慢性的に不足している
自前で高額機器を購入するかしないか、外部施設の積極的利用や後継者の人材育成をどうしたらよいか、現場の苦労、悩み、厳しい現実は今も昔も変わっていません。
投資額の大小のイメージは会社の規模で異なりますが、どの企業においても分析はコスト部門ですから、予算は他部門に比べて小さく、ヒト・モノを確保するのは難しいですし、なにかあるとすぐに縮小の対象になってしまいます。
(168.分析技術をコストカットの対象にしてよいわけがない;https://asfrontiers.com/2025/10/20/column168/)
お金を出してもらうテクニックの一つは「上を気持ちよくその気にさせる」ことです。口の悪い私は以前「騙す」と表現しました。
(31.研究を提案するときの注意事項;https://asfrontiers.com/2023/02/27/column31/)
その気にさせるためには、真面目な言えば、「立派なストーリーを組み立て、将来を俯瞰できるわかりやすい上に刺さるプレゼンをすること」です。
(19.聞き手は誰かを意識する;https://asfrontiers.com/2022/12/05/column19/)
実は、「上」も気持ちよく騙されたい?というか、自分の時代に大型投資(分析装置などでは大型というほどのことはあまりありませんが・・・)をしてみたい気持ちがあります。 現場と「上」の望みは、感情的には共通しています。
みなさん、がんばりましょう。
さて、装置には当たり外れがありますので、納入実績があり、評価の定まったものを購入するという堅実策をとりがちです。特に大きな買い物では、どうしても慎重になってしまいます。
参考にならないとは思いますが、私のいた会社では、1号機、日本では最初、民間企業では味の素社さんが最初に納入、という装置にこだわっていました。「β機でもよいから入れてほしい」とお願いしたこともありました。
「新しいもの好きだよね、お金があるから・・・」と陰で言われていましたし、それを否定するつもりもありませんが、意図ははっきりとしています。
メーカーさんにとって、最初に納入された装置の評判は大切です。「味の素社さんが買った」ということはかなりの宣伝効果になりますが、もし性能が出なかった場合、口の悪い私たちのことです。悪い噂はすぐに広がってしまいます。メーカーは必死です。私たちからのいろいろな要求に迅速かつ誠実に対応してくれます。
使う側の研究者も高額な装置であればあるほど、人情として必死になって成果を出そうとします。
お互いにメリットが多く、結果的に大きな失敗はなかったと思います。

