(05)誘導体化HPLC ②LC/MSのための誘導体化 

LC/MSはそれ自体、選択性も感度も高いことが知られていますが、微量成分を分析する場合、プレカラム誘導体化による高感度化を行います。誘導体化試薬には、正電荷或いは負電荷を与えやすい構造のものが用いられます。 

プレカラム誘導体化「LC/MS」アミノ酸分析 
アミノ酸分析においても、プレカラム誘導体化LC/MSが数多く報告されていますが、ここでは、代表的な試薬であるAPDSタグについて紹介します(図1-1)。 

APDSタグはアミノピリジンを有するので、アミノ酸を正イオンモードで感度よく測定可能です。またその誘導体はアミノ酸そのものに比べ疎水性が高くなるので、逆相HPLCで非常によく分離します。 

APDSタグを用いたLC/MSアミノ酸自動分析装置UF-Amino stationが島津製作所から販売されていて、38種類のアミノ酸が約8分で測定できます(図1-2)。これまで、ニンヒドリンによるポストカラム誘導体化分析では、約2時間が必要でした。UF-Amino stationによる血漿中のアミノ酸分析の定量値は、ニンヒドリン法と非常によい相関が得られています。 

図1-1 APDSタグ
図1-2 LC/MSプレカラム誘導体化アミノ酸分析のクロマトグラム

 

プレカラム誘導体化「LC/MS/MS」アミノ酸分析 
MS/MSのフラグメンテーションを活用できるプレカラム誘導体化試薬も開発されています(図2)。 

図2 LC/MS/MSの特徴を活かす誘導体化試薬のイメージ 

 

APDSタグや類似の構造を有するTAHSは、その代表的なアミノ基誘導体化試薬です(図3-2)。アミノ酸と試薬が反応して形成されたウレア結合は、MS/MSで極めて選択的に開裂します。このときMS/MSで、試薬由来のフラグメントイオンを検出するように設定すれば、誘導体化されたアミノ酸だけをクロマトグラム上で観測することが出来ます。 

また、TAHSは四級アンモニウムですから、高感度なアミノ酸分析が可能で、選択反応モニタリング法(SRM)を用いれば、数十アトモルレベル(10-17 mol)のアミノ酸を検出することが出来ます。 

図3-1 開裂を誘起するアミノ酸誘導体化試薬(APDS)
図3-2 開裂を誘起するアミノ酸誘導体化試薬(TAHS)

【参考文献】
角田誠, 住田有子, 和光純薬時報, 86(No4) 9-11(2018). 

【参考情報】
富士フイルム和光純薬「アミノ酸の組成・定量分析 APDS法」 
SHIMADZU「LC/MS高速アミノ酸分析システム」の紹介 

 

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