96. 学力とはなんだろう
全国学力調査のテストが行われたという報道がありました。
https://www.nier.go.jp/24chousa/24chousa.htm
新聞にも問題と正答例が掲載されていましたが、中学国語の習字の文字が美しく目をひきました。
しかしその設問を見てびっくり。
習字の文字4か所に㋐~㋓の印があり、次の中から正しいものを選ぶというものでした。
㋐の部分は、楷書とは異なり点画を連続して書いている
㋑の部分は、楷書とは異なり点画を直線的に書いている
㋒の部分は、楷書と同様に終筆を止めて書いている
㋓の部分は、楷書と同様に点画を省略して書いている
この知識が本当に国語の学力なのでしょうか。
逆にこれを知らなかったからといって学力がないと言えるのでしょうか。
その一つ前の問題は短歌に関する問題でしたが、次の中から正しいものを選択するものでした。
1.「風さやか」の部分に、擬人法が用いられている
2.「庭に月待つ」の部分に、直喩が用いられている
3.「萩すすき」の部分に、倒置が用いられている
4.「蜩の声やみし夕暮れ」の部分に、体言止めが用いられている
もう一度、書きます。
その知識本当に必要ですか?それが学力ですか?
無駄と思えるような勉強や暗記はたくさんあります。
私が高校生の時の冬休みの宿題は、百人一首を全部覚えてくることがでした。
また、源氏物語、平家物語、枕草子、徒然草、方丈記の冒頭の文を全部覚えさせられもしました。
これらを知っていることが日本人の常識のような風潮もあります。しかし、そんな暗記に若い脳みそと貴重な時間を使っていいのでしょうか。
「いづれの御時にか、女御、更衣あまたさぶらひたまひける中に、いとやむごとなき際にはあらぬが、すぐれて時めきたまふありけり」
いまでも源氏物語の冒頭を言えます。
意味がわからないまま暗記していたのですが、「更衣」の意味を最近初めて知り、この一文の意味が理解できました。そのことを90歳の母親に話したら、「更衣」を「御寝に侍る女(ひと)」と学校で習ったと言っていました。なかなか拓けた学校に行っていたようです。
私は源氏物語について雑学程度に中身(平安時代上流階級の乱れた関係)を知っているにすぎないのですが、中高生の教材として、この冒頭の文ですら不適切な内容のように思います。そしてこれを暗記させるという教育はとても不思議です。(さすがに現在はそんな教育はされていないと信じますが。)
話があらぬ方向にいきそうなので、今日はここまでにします。
しかし、学校の勉強で何を学ぶべきか、それをどのように教えるべきか、ということについて、いずれこのコラムでも考えてみたいと思っています。